この前、スマホで買い物してて、似たような商品が2つ並んでた。どっちも星の数は★3.6。「じゃあ同じくらいか」ってカゴに入れかけて、手が止まった。
片方はレビューが全部★3か★4あたりに固まってて、もう片方は★5と★1が殴り合った末に、ならして3.6。……同じ「★3.6」でも、これ、全然ちがう買い物じゃないか?
(気づけば、また平均の話で身構えてる。前も星の数で身構えてた気がする。)
「同じ平均」を、疑ってみる
最初は「どうせ外れ値が1個いるだけでしょ」と思った。★1を誰かが1人つけただけ、みたいな。でも、それだと説明つかない。★5と★1が両方たくさんいて、ならして真ん中、って場合もある。
じゃあ「同じ」ってどういう時に言えるんだ。平均が同じなら同じ? 中央値まで同じなら? ——頭の中でこねてても埒があかないので、いちばん単純な形で並べてみた。
10人ずつ、並べてみた
架空のデータで。A組10人、B組10人、どちらも点数の合計600、平均60点。
A組: 55, 57, 58, 59, 60, 60, 61, 62, 63, 65
B組: 20, 30, 40, 50, 60, 60, 70, 80, 90, 100
A組は55〜65にぎゅっと。B組は20〜100でバラバラ。でも平均はどちらも60。念のため中央値も出したら、これも両方60(10人を並べて5番目と6番目の真ん中)。平均も中央値も同じ。それでもこの2つ、「同じ」と言っていいのか?
「散らばり」を数字にする
一番シンプルな方法から。範囲(レンジ)。最大値から最小値を引くだけ。
- A組: 65 − 55 = 10
- B組: 100 − 20 = 80
同じ「平均60・中央値60」でも、幅がこれだけ違う。ただし範囲は端っこ2つだけで決まるから、外れ値が1個いるだけで大きく動く弱点がある。「だいたいどのくらいバラけてるか」の第一印象には使えるけど、それだけで全部は分からない。
次が四分位範囲(IQR)。端っこじゃなく「真ん中50%がどこに収まるか」を見るやつ。
10人を並べて半分に切る。下5人・上5人、それぞれの真ん中の人を「第1四分位(Q1)」「第3四分位(Q3)」と呼ぶ(要は、データ全体の25%ラインと75%ライン)。
- A組: Q1=58、Q3=62 → IQR = 62 − 58 = 4
- B組: Q1=40、Q3=80 → IQR = 80 − 40 = 40
A組の真ん中50%は58〜62の4点幅に収まってる。B組の真ん中50%は40〜80の40点幅に広がってる。平均と中央値だけ見てたら同じに見えた2クラスが、IQRを出した瞬間に別の世界になった。
(ひとつ注意。Q1・Q3の出し方は流派が何種類かあって、Excel の QUARTILE.INC と QUARTILE.EXC でも少しズレる。だから別のツールで試して数字が1〜2違っても慌てなくていい。「真ん中50%の幅」という意味は変わらない。)
これ、受け持つ先生の大変さが全然違う。
……「全員が似た理解度」と「できる子とできない子が両方いる」は、同じ「平均60点」の話じゃない。
代表値と散らばり、セットで見る
前回(#01)で「平均だけじゃなく中央値も見る」と書いた。今回はその続き。代表値(平均・中央値)は「真ん中がどこか」を教えてくれる。でも「どれだけバラけてるか」は、別に見ないと分からない。
数字は嘘をつかない。でも「平均が同じ」という事実だけ取り出して「だから同じ」と言う人は、散らばりをこっそり省いてる。省かれてるのに気づかず頷くのが、一番まずい。
Darrell Huff の『統計でウソをつく法』(1954)にまとまってる手口も、けっこうこのパターンが多い。70年前の本が今も売れてるのは、人類がずっと同じ罠に落ち続けてるからだと思う(健気だろ、というのは#01でも書いた)。
今日の手の内
数字を見たら、代表値と散らばりをセットで確認する。
- 範囲(最大−最小):バラけ幅の第一印象
- IQR(Q3−Q1):真ん中50%がどのくらい広いか
……「確認する」と書いたけど、僕が毎回やってるかは正直あやしい。習慣になってるかは、まだ測ってない。測ったらまた書く。