暑い。喉が渇いて、自販機でジュースを買おうとしてた。普段はスマホでピッなんだけど、その日のはタッチ非対応のやつで、久々に財布から小銭を出した。で、その100円玉を落とした。自販機の下にころころっと転がっていった。
100円くらい大したことない。と思いつつ、気づけばしゃがんで10分(いや、盛った。まあまあの時間)下を覗き込んでた。で、探しながらふと思った。お金の話をするとき、僕らはよく「平均」って言う。あれ、実際どのくらい当てになるんだっけ、って。
平均と中央値が違う、ってのは、たぶんみんなも言葉では知ってる。僕も知ってた。学校のテストで○が付く程度には。でも「実際どう違って、何が起きるのか」を説明できるかっていうと、前の僕は無理だった。なんとなく分かった気になってただけ。だから自分で数字を並べてみた。
10人の部屋で、何が起きるか
10人が住んでる部屋を想像してほしい。9人の年収が300万円。残りの1人が、なぜか3億円。
この部屋の「平均年収」を出す。全部足して、10で割るだけ。
- 300万 × 9人 = 2,700万
- そこに 3億(=30,000万)を足して、32,700万
- 10で割って……3,270万円
「この部屋の平均年収は3,270万円です」。嘘じゃない。計算は合ってる。でも、誰だよそれ。9人は300万で暮らしてるのに、部屋の看板には「平均3,270万」。この数字、部屋の誰の顔もしてない。3億のあいつ1人が、9人ぶんの現実を持ち上げて、なかったことにしてる。
じゃあ中央値。10人を年収の順に並べて、ちょうど真ん中の人を見る。300万円。9人の現実はこっちだ。3億のあいつがいようが、真ん中は真ん中。びくともしない。
なんでこうなるか(ここだけ真面目)
平均は「全部足して割る」。だから極端にデカいのが1個混じるだけで、まるっと引きずられる。 中央値は「並べて真ん中」。周りがいくら持ってようが、真ん中の人は動かない。
で、世の中の数字ってけっこう偏ってる。年収、家賃、SNSのフォロワー、動画の再生数。上のほうに化け物が数匹いて、下に大勢いる。こういう「偏った山」では、平均より中央値のほうが”みんなの実感”に近い。逆に、身長みたいに左右対称できれいに散らばるやつは平均でいい。使い分けはそれだけ。
で、これの何が怖いか
ここがキモ。「平均年収3,270万」は、嘘じゃない。数字は嘘をつかない。嘘をつくのは、平均のほうを選んで見せた人間だ。
「数字は嘘をつかない、でも嘘つきは数字を使う」って言葉がある。誰が言ったかは諸説あって(マーク・トウェイン説とか、昔の統計屋のライトって人の説とか)、正直はっきりしない。だから僕も「そう言われてる」までしか言わない。
……ちなみに、この手の「本当の数字で人を騙す技」、1954年に Darrell Huff って人が『統計でウソをつく法』って本でまるっと一冊にまとめてる。70年前の本が今も普通に売ってる。つまり人類、70年間おなじ手に引っかかり続けてるってことだ。健気だろ。
実務でもだいたいこれ
仕事でも同じ。「施策で平均滞在時間が伸びました!」みたいな報告を平均だけで見せられると、僕はちょっと身構える。1人が寝落ちしてタブを8時間開きっぱなしにしただけで、平均は跳ねる。だから「中央値は? 分布は?」って聞く。
聞くだけでいい。それだけで「お、こいつ分かってるな」の顔をされる。
……中身は今みんなが読んだこれだけなのに。お得。
今日の結論
平均が悪いんじゃない。「平均だけ」が危ない。 数字を出されたら、一回だけ「それ、平均? 中央値?」って思う。それだけで、騙される回数がちょっと減る。
……いや、「減る気がする」だな。そこは正直、まだ測ってない。測ったらまた書く。