データサイエンスのいろは · ⏱️ 読了目安 6分

同じ瓶から二回すくったのに、赤の数がぜんぜん違った

先週末、姪の七歳の誕生会に呼ばれた。庭に大きなガラス瓶が置いてあって、色とりどりのグミがぎっしり詰まってる。ルールは単純で、「一回だけ手を突っ込んで、好きなだけすくっていい。赤が多かった人の勝ち」という、大人が適当に考えたっぽい遊びだった。

僕がすくうと、30個中9個が赤。3割。隣で調子に乗った甥がもう一掴みすくうと、28個中14個が赤。5割近い。同じ瓶、同じルールなのに、数字がまるで違う。

(「お前、赤だけ狙って掴んだだろ」と一瞬疑ったが、甥はただ手がでかいだけだった。)

一息で言うと、これは**「同じ集団から取っても、取るたびに数字は少し揺れる」**という話だ。標本誤差、というやつ。たとえるなら、同じ鍋の味噌汁を、同じお玉で、同じ位置からすくっても、毎回具の量が微妙に違うようなもの。鍋の中身が変わったわけじゃない。すくうたびに、たまたま乗ってくる量が違うだけだ。

瓶の中身は変わってないのに

最初は甥を疑った。次に、赤いグミは重くて瓶の底に沈んでるんじゃないか、と思った。だとしたら深く手を入れたほうが赤が増えるはず。でも二人ともだいたい同じ深さまで突っ込んでた。じゃあ手の大きさか——一掴みの個数は28個と30個でほぼ同じだから、それも決定打じゃない。

残った説明はこれだけだった。瓶の中身は最初からそれなりに混ざっていて、それでも「一掴み」という小さな標本を取ると、たまたま赤が固まってる場所に手が当たることもあれば、少ない場所に当たることもある。

すくった人個数うち赤赤の割合
30個9個30%
28個14個50%

数えてみる(ここだけ真面目)

同じ瓶、同じすくい方。それでも赤の数は毎回ちょっと違う。
同じ瓶、同じすくい方。それでも赤の数は毎回ちょっと違う。

仮に瓶の中身が、赤がちょうど全体の半分(50%)だったとする。瓶自体は変わらない。そこから一掴みを何度も取り直したら、赤の割合はどれくらいブレるものなのか。

これ、実は世論調査で毎回起きてることと同じ仕組みだ。仮に「本当の支持率」が50%だったとして、100人に聞くアンケートを取り直すたびに、出てくる数字はどれくらい動くか。

見積もり方はこう。割合の”揺れの大きさ”は、だいたい「割合×(1−割合)÷人数」の平方根で出せる。

  • 0.5 × 0.5 ÷ 100 = 0.0025
  • 0.0025 の平方根 = 0.05 = 5ポイント

つまり、本当の支持率がぴったり50%でも、100人に聞き直すたびに「45%でした」「53%でした」みたいな数字がふつうに出る。±5ポイントくらいは、標本を取り直したときの”ふつうの揺れ”の目安ということだ。

じゃあ「操作されてる」はいつ言えるのか

じゃあ、A社が48%でB社が53%出したら、どっちかが数字をいじってるってこと?

……別にいじってなくても普通に起きる差だ。むしろ2社が寸分違わず同じ数字を出してきたら、その方がちょっと出来すぎだと思ったほうがいい。

揺れの目安(この例なら±5ポイントくらい)を大きく超えて動いたときに、はじめて「何かが本当に変わったかもしれない」を疑えばいい。数ポイントの上下だけで「支持率急落」と見出しが付いてるのを見ると、僕はまず何人に聞いたのかを確認するようになった。

今日の学び

同じ数字が動いたのを見たとき、確かめることは2つでいい。

  • ✅ 何人(何個)から言ってる数字か
  • ✅ その動き幅は、標本を取り直しただけで起きる”ふつうの範囲”を超えてるか

誕生会の帰りに、瓶の中身を用意した親が内訳を教えてくれた。実際は赤42%だったらしい。僕の一掴みは30%、甥は50%。二人とも、別にズルしてない。同じ瓶から、同じルールですくって、それでも数字はブレる。今日わかったのは、それだけの話だった。

やあ、ここまで読んでくれてありがとう。

身近な疑問に引っかかったら、数えて確かめないと気が済まない。引っかかってから「なるほど」に辿り着くまでの過程を置く場所「猫だくさん」。