昔の模試の成績表が出てきた。平均点、自分の点、偏差値、志望校の判定。その隅に、小さく 「標準偏差 12.3」。
毎週これを眺めてた受験生のころ、この数字だけは一度も気にしたことがなかった。今あらためて見て、「±12点くらいってこと?で、それが何?」——詰まった。
知ってる。標準偏差は知ってる。言葉としては普通に使ってきた数字だ。でも「どういう意味?」の一言で詰まるということは、腹では分かってなかった、ということだと思う。
バラつきを「1個の数字」にしたい
前の話(#03)で、「同じ平均でも散らばり方が全然違う」ことをやった。A組もB組も平均60点なのに、A組は55〜65にぎゅっとして、B組は20〜100にバラバラ、っていう。
じゃあ「どっちがよりバラけてる?」を1個の数字で言いたい場面がある。#03 で使った道具を思い出す。範囲(最大−最小。いちばん端の2人の差)は、端っこが1人動くだけで跳ねる。IQR(真ん中50%が収まる幅。外れ値に強い代わりに、真ん中しか見てない)もある。どっちも「全員」のバラけ方は見てない——このへんの話は前回(「同じ平均」の中を開けてみたら…)でやった。
今度は、全員のバラけ方をならして1個の数字にまとめる方法が要る。それが分散と、その√が標準偏差。
同じ「平均60点」で、試してみる
さっきの A組・B組、点数を5人ずつ具体的に置いてみる。どちらも平均はぴったり60点。
A組(ぎゅっとしてる): 56 / 58 / 60 / 62 / 64
B組(ばらけてる): 20 / 40 / 60 / 80 / 100
合計はどちらも300点 ÷ 5 = 60点。でも中身は全然違う。
計算の手順を書いてみる
- 各人の「平均からのズレ(偏差)」を出す
- そのズレを2乗する(マイナスとプラスが打ち消し合わないように)
- 全部足して人数で割る → 分散
- √する → 標準偏差(元の単位に戻る)
A組でやってみる。平均60なので偏差は −4 / −2 / 0 / +2 / +4。2乗すると 16 / 4 / 0 / 4 / 16。合計40を5で割って、分散 = 8。 標準偏差 ≈ 2.8点。
B組は。偏差が −40 / −20 / 0 / +20 / +40。2乗の合計が 4,000。5で割って分散 = 800。 標準偏差 ≈ 28点。
A組は全員が56〜64点にいて、B組は20点から100点に散らばっている。「平均60点」の看板は同じ。でも標準偏差2.8点のクラスと28点のクラスは、住んでいる世界が違う。
後者、同じ「クラス平均60点」で通知表に出てくる。
……「みんなだいたい60点」と「20点から100点までピンキリ」が、同じ顔をしてる。
偏差値が、やっと読めた
標準偏差の話をすると、偏差値もついてくる。
偏差値の式はこう。
たとえば、クラスの平均点が60点、標準偏差が10点のとき、80点を取ったとする。 で、偏差値70。
つまり偏差値は、「自分が平均から標準偏差いくつ分、離れているか」を測っている。
受験生のころ、毎週のように偏差値を眺めてた。上がった、下がった、志望校に届くか。言葉としては完全に使えてた。でも「偏差値って何?」に、ちゃんと答えられなかったんだと思う。今さら気づいた。
(気づくのが遅すぎる気もするが、使いながら分かっていく方が、多分体には染みる。)
今日の手の内
成績表やデータに「標準偏差○○」って書いてあったら、そこが散らばり具合だ。その数字が小さければ「みんなだいたい似てる」、大きければ「ピンキリ」。
で、肝心の「じゃあどう見るか」。平均点は真ん中を教えてくれるだけで、自分がその中でどこにいるかは何も言ってない。σが小さいクラス(A組・2.8点)なら、平均から10点外れただけで大きく順位が動く。σが大きいクラス(B組・28点)なら、10点や20点の差は誤差みたいなものだ。同じ「平均+10点」でも、σ次第で重みが正反対になる。
だから平均点だけ見て一喜一憂しても意味がない。σを見て、はじめて「自分の10点」が効くのか誤差なのかが分かる。偏差値が「平均から標準偏差いくつ分か」を測ってたのは、まさにこれを1個の数字にするためだった。
「標準偏差」を毎週の成績表で見ておきながら「±」ごと読み飛ばしてきた僕には、わりとデカい気づきだった。
……「デカい気づきだった」で終わらせてるけど、次に平均だけ書いてあるデータを見たとき、ちゃんと「で、σは?」と聞けるかは、まだ分からない。試したらまた書く。